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データセンターという怪物(『地平』2025年3月号 特集3より)

 2025年3月号より、「特集3 データセンターという怪物」。AI、AIと喧しいが、「業者はその負の側面について積極的には語らない」という点はここでも当てはまる。AIがもたらす無視できない問題の一つが、その消費電力の多さだ。本特集は、この問題に焦点を当てて2本の論文が掲載されている。

そもそもAIとは(雑感)

 そもそもAI(人工知能)と人間の知能は根本的に違う。おおざっぱに言うと、最近流行りの生成AIは、電力などを外部から無尽蔵に投入できることを前提にしている。膨大なエネルギーを使って膨大な計算をこなすことで出力の質を高めるわけだ。これに対し、人間の知能は「できるだけ消費カロリーを節約する」という生物学的制約条件の下で進化している。設計思想からして違う、と言っていいだろう。
 このような質的な違いが明確にあるので、今の方向性でAIがどれほど進歩しても、人間の知能とは別物にしかならないだろうと思う。……それはさておき。

 

隠されるAIのコスト

 そのAIは膨大なエネルギーを必要とする。これが結構シャレにならないことは最近チラホラと耳にするが、まとまった論考・情報が少ない中、この特集はとても良い。

 ロイス・バーシュレイ「隠されるAIのコスト」。著者は調査報道ジャーナリスト。内容をかいつまんで紹介する。

 まず、バージニア州プリンスウィリアム郡へのデータセンターの集積が原因で、郡を管轄する電力会社が「必要な電力を供給する保証はもうできない」と悲鳴をあげるに至っている。なお、データセンターは電力だけでなく、(冷却用の)水も大量に消費する。

 当然、電力供給能力を向上させるための投資も行うのだが、その投資費用は電力利用者全体に按分され、データセンターのためのインフラコストを地域全体で負担させられる、つまり、典型的な外部費用の押し付けだ。データセンターは新規雇用を産むわけでもないので、住民としてはマイナスしかない。

 その上で、データセンター側の情報隠蔽体質だ。その立地による影響予測を可能とするためにも、これらデータセンターは電力消費量の実績値などデータ提供に協力すべきだが、大半の企業が情報公開に消極的だ。当然、政府が規制に動くべきだが、そのような動きは現状ではほぼ皆無である。

 そして、先進国でこうした問題がクローズアップされるようになると、規制と監視の緩い第三国に移転しようとする。……既視感しかないな、この展開。

 AI業界内部からも懸念と問題提起の声があがっている(A Right to Warn about Advanced Artificial Intelligence)、という話はへぇーと思ったが、あまりにも弱々しいな。いずれにせよ、AI活用に際してエネルギー問題を「語らない」とすれば、そのこと自体がもはや非倫理的であるとみなされるべきだろう。

 

日本で、住民として、何ができるか

 もう一本、歌川学「巨大データセンターと立地地域 脱炭素から逆光させないための対策」。こちらは日本での同様の問題の発生を念頭に、地方自治体を中心にどのような対策を打っていけるか、とても実践的にまとめられている。

 まず、大規模施設に対する省エネ・再エネ転換を求めていくこと。加えて、データセンターの排熱についても、ヒートアイランド対策が必要なことにも言及されている。排熱対策、結構大事。

 次に、それらを実現する具体的な対策。データセンターの建設計画などがあれば、行政から積極的に情報を開示させ、対策を求めること。懸念が払拭されなければ、建築等の許可を出さないこと。都市計画や地球温暖化対策など諸計画に反映させること、紛争調停メカニズムの策定等々。

 一つひとつが具体的で参考になる。……ちなみに、こちらの方が掲載ページは前なのだが、先に「隠されるAIのコスト」を読んだ方が、文脈上わかりやすいと思う。