『地平』の7月号がまたまたおもしろいのだが、個人的にイチオシは特集3の「トランプ・ショックの深層」。3本の論文の相互補完のバランスがよく、とても勉強になった。
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一本め、中本悟「オンリー・アメリカの「相互関税」」。トランプ経済学が支離滅裂すぎるのだが、簡潔に整理した上での冷静なつっこみのおかげで、だいぶ頭がスッキリした。
トランプはアメリカの貿易赤字の責任を相手国の貿易障壁のせいにするが、失当である。アメリカの貿易赤字の最大の原因は「ドルが基軸通貨であること」である。要するに、国際的なドル需要の分だけ、アメリカは貿易赤字を垂れ流すことができる。これはつまり、ドル需要の分だけアメリカは世界経済から「引き換えの財やサービスなしに」財やサービスを調達できる。いわゆる「ドル特権」である。アメリカは世界経済から通貨発行益を得ているのである。
確かにこれは不公正なのだが、その意味はトランプがいうのとは真逆だ。アメリカはむしろ、享受している通貨発行益に見合った責任を国際社会に対して果たすべきだ、と私などは以前から思っている(国家が、自国内に対してもつ通貨発行益を、国内統治における人権保障のために活用する責任を負っているのと同じである)。
「アメリカは世界中から搾取されているのだぁ」とギャースカ喚くトランプを見ていると、本当に頭を抱えてしまう。トランプ経済学は、試験の答案ならほぼ0点のゴミクズでしかない。
※この著者が編者となっている次の本も参照したが、これもおすすめ。
二本め、所康弘「トランプ関税の地政学 メキシコの場合」。第一次政権での出来事も踏まえ、トランプがいかに「恫喝的」経済交渉を進めているかを赤裸々にまとめられていて、勉強になります。辟易もしますけれど。
※関連して、最近読んだ次の本も紹介しておきたい。
三本め、スティーブン・セムラー「軍事以外はみんな餓え死に トランプ予算案の分析」。アメリカの予算は、あまり見る機会がないので知らないことが多かったのだけど、しかし、改めてみると「こんなに軍事に偏った予算なのか」と驚く。確かに、先進国スタンダードな社会保障・社会保険をロクに整備していなければ、こうなるか。
しかも、軍事と警察の予算をさらに増額した上で、国民の福祉につながる予算は(元から少ないのに)さらに削られている。タイトルは誇張ではない。ぜひ直接当たって、その数字にビックリしてほしい。
……しかし、こういうこと書いてると、アメリカに入国させてもらえない人になりそうですね。そもそも、当面、いく気になりませんけども。
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