ALS告知せず死亡、医師の傲慢
全身の筋肉が動かなくなる神経難病「筋委縮性側索硬化症(ALS)」を発症した京都市西京区の女性に対し、親族で主治医の医師(54)が、病状の告知や人工呼吸器を使えば長く生きられることを伝えず、女性がそのまま死亡していたことが1日、分かった。
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2007080200006&genre=C4&area=K30.htm
またか、という感じ。
これは記事にもあるように「「告知は最初から患者と家族に同時に行う」とする日本神経医学会のALS診療ガイドラインに反している」のだが、医師の言い分は「ALS患者に人工呼吸器を着けると寝たきりのまま、いつまでも生き続ける。命の選択を一律に本人に強いる風潮はこれでいいのか。問題提起をしたい」だそうな。既に死なせておいて問題提起も何もないだろう。少なくとも、患者に対する問題提起にはならんわな。
その、寝たきりのまま、いつまでも生き続けている日本ALS協会会長*1・橋本みさお氏は次のように述べる。
一報に接し、実母だったらどうだったろうと思った。話を矮小化してはいけませんが、私が患者なら、この医師は選ばない。医師としてより人として、ALSに偏見や憐れみがあったのではないか? 終末期医療のあり方の議論が盛り上がっているが、告知の議論はどうなっているのか? なぜ専門誌に、このような稚拙な事例が載るのか? 病は誰のものか? 日本神経学会に神経内科医を名乗る医師の教育の徹底を切望する。
http://www.arsvi.com/0p/et-2007n.htm
ポイントは、生きており、かつ、生きていることに満足している事例が存在するにも関わらず、「そんなことはありえない」とでも言うかのように、医師が一方的に選択した結果を患者にもたらしている、という点である。僕らの業界で言うなら、もう大学をやめて別のことをした方がよいと思われる学生の退学手続きを勝手にやってしまう、というような話になるだろうか。こういう事例ならいかなる理由があろうとも問題にされるはずだが(そもそも手続きそのものができなくなるはずなのだが)、人の生き死にの方がもっとずっと安直な手続き──担当医の一存、時々おまけのように付け足される倫理委員会の支持──で決められる。わけわからん。
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*1:あまりに世界中を飛び回るせいか、「怪鳥」とも言われている。