モジモジ君のブログ。みたいな。

はてなダイアリーから引っ越してきました。

第1回報告

 ようやく今日から3章「完全競争下での銀行業システム」を読み始めています。考えてみればまともに金融の勉強するの初めてなこともあり、エライ時間かかってます。とりあえず今日はp.53の「基本モデル」の手前まで読みました。29日から実家に帰ることになったので、年内に3章(できれば4章)まで読めればいいな、と思ってます。とりあえず、ここでのまとめ。いくつか書き残したことがありますが、時間がないのでここまでで。
 関連して、kaikajiさんのメモ:http://d.hatena.ne.jp/kaikaji/20041216

金融市場の特徴

 通常の財を売るときには、お金を受け取って品物を渡してしまえばそれでオシマイ。だから、売るときの値段は高ければ高いほどいい。どんなに高い価格でも、それで欲しいという人がいて、その人にその価格で商品を引き渡すことができれば、そこで取引は終わり。売る側にとってのリスクはない。しかし、信用という財は違う。貸して、それに利子が上乗せされて戻ってきて、初めて取引が終了する。相手が約束を守ってくれて初めて、取引は利益を生む。だから、約束を破らない相手かどうかを「審査」するために、あるいは貸した後でおかしな使い方をして破綻しないよう「監視」するために、コストがかかる。つまり、普通の財を売るときには、売る側は買う相手のことを知る必要はないが、信用を売る金融の場合には、相手についての情報が極めて重要になってくる。スティグリッツとグリーンワルド(以下S&G)は、ここに金融市場の特殊性を見る。

 この考え方からいくと、銀行は「可能な限り高い利子で貸し出す」というようなことをしなくなる。原因は、借り手の間に質の違いがあり、それを銀行は完全には知ることができないことだ。借り手のタイプを大きく二つに分ければ、確実に返してくれる堅実で安全な奴と破綻の危険ギリギリのチャレンジをする危険な奴に分けることができる。安全な借り手は、ある程度金利が高くなると、借りるのを諦める。この状況での金利をrとする。危険な借り手はrよりも高い金利でも借りにくる。というのは、危険な借り手は破綻して返さない可能性があるので、安全な借り手よりも金利を小さく評価する。というわけで、金利を上げていくと、安全な借り手は他の銀行へ逃げてしまい、自分のところには危険な借り手ばかりが集まってくる。典型的な逆選択の状況だ。結果、期待収益はかえって下がってしまうかもしれない。というわけで、銀行は、金利rより高い金利で貸し出そうとはしなくなる。

 安全な借り手が借りようとする限界の金利r(先ほども言ったように、この金利を越えると危険な借り手ばかりが集まってくる)が、通常の経済学のモデルで言うところの均衡金利(貸付資金需要曲線と同供給曲線の交点で決まる金利)よりも低ければ、金利はrで止まってしまい、市場では貸付資金の超過需要が存在したままになってしまう。*1

 さらに面白いことは、景気が悪くなるとむしろ金利を上げる可能性がある、ということだ。理屈はこう。景気が悪くなると、様々な投資プロジェクトの期待収益は低下する。ここで仮に、安全なプロジェクトの期待収益は少ししか低下しないのに対して、危険なプロジェクトは大きく低下するとする。この場合、安全なプロジェクトの期待収益は、危険なプロジェクトのそれに対して「相対的に」有利になるので、rよりも高い金利でも危険なプロジェクトを選ばずに安全な投資機会に留まろうとする。よって、銀行はrより高い金利をつけても、危険な借り手ばかりが集まってくるという心配をせずに金利をあげることができるのだ。*2

*1:p.29 図2.1。

*2:p.33 図2.2。