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刑訴法改悪法案、国会へ ~ 2015.03.26参議院内閣委員会 山本太郎議員質疑

 以前から「やばいやばい」と言われていた刑事訴訟法改正法案が3月13日に閣議決定され、今国会に上程されているようです。この件について、去る3月26日に山本太郎参議院議員(生活の党と山本太郎となかまたち)の質疑がありました。見ると、これがまた改めてやばい。いくつか補足情報を加えて、紹介したいと思います。

 まず、これまでの経過を簡単に整理しておきましょう。2009年に発生した(厚生労働省村木厚子氏を被疑者とする)障害者郵便制度悪用事件の関連で、検察官による証拠捏造事件が発生。これをきっかけとして法務省で「検察のあり方検討会議」がもたれ、検察改革が議論されました(2010年11月~2011年3月)。その後引き続き、法務省法制審議会で「新時代の刑事司法特別部会」がもたれ、刑事司法制度全体に対象を広げ、議論されました(2011年6月~2014年7月)。
 経緯からわかるように、「証拠捏造による冤罪(未遂)」という最悪の事態を受けて、その再発防止を直接の動機として検討が開始されたものです。また、同じ時期に氷見事件や足利事件の冤罪が確定したり、袴田事件狭山事件等の再審請求もありました。当然、真面目に冤罪防止に向けた議論をすると期待するでしょう。ところがどっこい、検察のあり方検討会議の最初から、「冤罪をなくす気なんかまったくないだろう」としか思えないもので、実際、今回出てきた法案もとんでもないモノです。

 柱は大きく三つ。第一は、盗聴範囲の拡大。これまで一部の重大犯罪だけが対象だったのが、逆に、「盗聴の対象にならない犯罪の方が少ない」という事態になります。被疑者だけでなく、被疑者の家族や友人等関係者でも対象になる可能性がありますから、警察の前に市民のプライバシーはないも同然です。
 第二に、取調べの一部可視化。「可視化されていなかったのが、一部でも導入されるのは前進」と見る向きもありますが、たとえば、録画せずに「これこれこういう風に供述しろよ」との打合せた上で、その打合せ通りの供述してる場面だけを可視化したりすれば、これまで以上に自白強要が悪質化・深刻化する懸念もあるわけで、全面可視化以外は意味がありません。
 そして、第三に、司法取引の導入。司法取引とは「捜査協力の見返りに求刑の軽減、いくつかの罪状の取下げを行うこと」ですが、誰でもすぐに考えるように、「第三者を悪意に陥れる供述で自己保身を図るケースはないのか」という懸念があります。捜査機関が裏づけ捜査をきちんとすればよいのですが、人質司法・自白偏重の日本の捜査機関に期待するのは野暮というものでしょう。また、捜査機関が悪意を持って第三者を陥れたい場合もありえます。
 なぜ、冤罪防止からはじまった刑事司法制度の検討がこういう結果になるのか、本当に意味がわかりません。


 というわけで、このあたりを念頭に置いて、山本議員の質疑をご覧ください。


2015.3.26内閣委員会(刑事訴訟法等改正案について質疑) - YouTube

 いくつか気になったシーンを取り上げますと。(1)現在、盗聴する場合には通信事業者等第三者の立ち合いが必要です。しかし、改正後はこれが不要になります。範囲拡大だけじゃないんですね。(2)「盗聴について第三者機関による監査は入れない。盗聴したら、その相手に通知して、不服申し立てできるからいらない」としていますが、この「通知」の件数は把握してない(!)とのこと。不服申し立てはたった1件。(3)取調べの全面可視化は裁判員裁判事件のみ。これは全事件の2.8%に過ぎません。他は可視化しない、と明言しています。

 山本議員が「冤罪を防ぐための可視化は骨抜きにした上で、捜査機関が欲しいものを全部詰め込んだ悪法」、「正しくは、捜査権限無限拡大法案」という趣旨の指摘をしていますが、まったくそのとおりだと思います。捜査機関にも法務省にも、まったく反省の色はありません。言うまでもなく、この悪法が成立すれば、政治弾圧にも広く活用できるわけです。ますます、日本の未来は暗いですね。

えん罪原因を調査せよ―国会に第三者機関の設置を

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