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モジモジ君のブログ。みたいな。

はてなダイアリーから引っ越してきました。

普天間基地県内移設に合理性は皆無、その2

 たぶん、一連のトラバとか、批判ブコメとかに答える、ことになってると思う。ブコメやトラバはいちいち真面目に読んでませんが。

「台湾侵攻に合理性がない」ことは共通認識

「中国政府が台湾に侵攻する合理的理由は存在しない」という指摘に対する批判のほとんどが、「中国政府が合理的に行動するとする保証はない」というものだった、というのは、かなり興味深いことではあるね。もちろん、政府の統制を離れて軍部が暴走する、という類のことが絶対起こりえない、とは言わないけれども、「可能性はゼロではない」という程度のことは、相当に荒唐無稽な話についても言えるのであって。少なくとも、たとえば、「資源確保」という合理的理由がすぐに思い浮かぶチェチェンイラクのケースなどと比べて、遙かに戦争になる可能性が低い、ということは言えるだろう。

 で、前回の記事でもそうだけど、僕は「荒唐無稽な話だから備える必要がない」などとは述べていない。少なくとも、台湾の中華民国政府は立派な軍隊を持っているし、横須賀には米海軍がおり、嘉手納には米空軍がいる。50年以上有事が発生していない東アジアにそれだけの兵力を平時から駐留させる合理性自体疑わしいけれど、それは措く。そこに加えて、海兵隊を置かねばならないかどうか、ということだけを問題にしているのだ。前記事で批判したオブイェクト氏を含め「台湾有事がありうるからアメリカ海兵隊は沖縄から動かせない」と主張している連中は「沖縄から海兵隊を取り除けば台湾の安全は風前の灯火だ」と言わんばかりである。んなアホな。

 横須賀や嘉手納の米軍もいらんと思うけど、とりあえずここでは(とりあえずは)そんなこと問題にしていない。沖縄の海兵隊の話をしている。これらを県外に移設したところで、台湾海峡の軍事バランス的にはまったく問題ないよ。

中国特殊部隊による奇襲?

 で、ここで「中国特殊部隊による奇襲」などという奇抜な想定が出てくるわけだ。正直、「ここ笑うとこ?」な話なのでまともに取り合わなかったのだけど、大まじめな人たちが結構いるようなので、一応批判しておく。

 第一に。こうした攻撃にまず第一義的に対抗するのは、当たり前のことだが、台湾の軍隊に他ならない。そして、そもそも、こうした奇襲攻撃は、成功するにせよ失敗するにせよ、相当程度短期間の間に結果の出る作戦である。だから、基本的には、台湾の軍隊が撃退に成功するかしないか、という話でしかないのであって、撃退に成功するにせよ失敗するにせよ、沖縄にいるアメリカの海兵隊の出る幕はおそらくない。仮にありうるとしても、ちょっとどういう状況なのか想定もできないほどのレア・ケースではあろう。

 第二に。仮にアメリカの海兵隊の出ていくだけの余裕があるとして、中国語がしゃべれるわけでもない、おそらく中国人と台湾人の見分けさえつかないだろう海兵隊が、特殊部隊による政治中枢への打撃というデリケートな戦闘に際して一体どんな効果的な支援ができるのか。まして、<そうした攻撃があるとすれば、奇襲攻撃に続いて本隊による本格的な攻撃があるだろう>と想定されているのに。なおさら海兵隊だけ派遣しても意味なんかない。

 では、どうして「中国特殊部隊の奇襲に即応して、海兵隊をヘリで派遣」などという荒唐無稽な話が出てくるのか。それはつまり、「沖縄にいることが軍事的に必要」という話を説明したくて、そのための具体例を考えているからだろう。つまり、元々必要性なんかない。で、そうやってひねり出すことのできる軍事的必要性というのが、この程度の馬鹿馬鹿しい話でしかないというわけだ。つまり、この話自体、いかに海兵隊が沖縄にいる必然性がないかの証拠みたいなものであって、海兵隊がいなくなったら台湾危機だ、日本のシーレーンが、とか騒いでる連中というのは、錯乱しているとしか思えない。

どうして海兵隊の軍事的必要性が語られるのか

 そもそも海兵隊は、なんらかの軍事的衝突に即応することを目的としていない。だから、あんな風にバラバラに配置されても想定内なのだ。即応できるなら、それに越したことはないけれども、政治的事情ゆえにそれがかなわないなら断念される。その程度のもの。朝鮮半島有事についてさえ、即応する予定はない。仮に半島有事があるとしても、韓国軍と連携して、在韓米陸軍と在日米空・海軍が即応し、戦線を形成するだろう。バラバラの海兵隊はその間に集結する。出番があるとしても、その後。戦線が形成され、制空権・制海権を確保され、その上で、突破口を開く必要のあるところに投入される、という案配。ついでに言うと、第一次湾岸戦争のときには空爆だけであらかた勝負がついてしまっていて、その出番さえなかった。海兵隊の輝かしい戦歴は朝鮮戦争での上陸作戦が最後で、その後はその存在価値にはずっと疑問符がつけられ続け、常にリストラ圧力にさらされている。

 それはともかく。海兵隊をどこかに置くとしても、その役割は「即応」ではないので、少なくとも、置くのは日本国内どこでもかまわない。訓練やらなにやらの都合があるので、あまりにもバラバラに置かれるのは困るだろうけれど、少なくとも、第3海兵師団の現状が示す程度にはバラバラにしてもかまわないらしい。というわけで、沖縄の海兵隊の移転先は、日本国内どこでもいいし、下手すると、第3海兵師団まるごと全部、アメリカ本土でもかまわないのかまわないのかもしれない。

 しかし、こういうことを正直に語られると、他ならぬ日本政府が困る。彼らは国内向けに「東アジアの軍事的必要性から在日米軍が必要」と説明してきている。そうでないなら、思いやり予算までつけて駐留させていることの説明がつかない。その説明ができないなら、「海兵隊はアメリカに帰ってください」と言わねばならなくなる。さらに、その大半を沖縄に押しつけるためには、「沖縄に駐留することの」軍事的必要性が説明されなくてはならない。その説明ができないなら、日本中全部が移転候補地になるのであって、誰も自分の選挙区でそんな話はしたくなかろう、ということではある。

 いずれにせよ、そもそも、海兵隊が沖縄にいる軍事的必要性などない。そんなものはない上に、朝鮮半島有事への対応なら「沖縄でなく九州」になってしまうので、仕方なしに「台湾」が出てくる。しかも、そもそもバラバラに配置されているため、説明されるべきは「沖縄にいる一部の部隊だけでも、沖縄にいること」の軍事的必要性なのだから、まともなシナリオではどうにも説明できない。結局、「特殊部隊による奇襲攻撃」などというバカみたいな話が出てくる。その程度のことなのだが、それでもこんな話を真に受ける人がこんなにいるんだから、世の中わからないもんだよね。