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私立大学にとっての教基法改悪

 日本私大教連*1教育基本法改悪についての声明を出している。私立大学プロパーの論点を整理するのも大事だと思うので*2、簡単に紹介する。

 教育基本法日本国憲法と一体に定められた基本法であり、憲法の精神を実現する主権者を育むために、教育の原則を定めています。しかし最終報告には戦争の反省がかけらもなく、さらには国民の教育権を明確に否定し、「国民に対し直接に責任を負う教育」を戦前のような「国家のために国家が行う教育」へと根本的に転換させる内容となっています。

 最終報告の持つ重大な問題点は、「愛国心」の押し付けです。内心の自由を法律で律すること、国を愛することを法律で決めそれを教育の目標とすることは、思想及び良心の自由を定めた憲法19条に明白に違反します。条文上の表現の問題で済むことではありません。また非常に多くの徳目が盛り込まれ、国家が内心に踏み込んでくる仕組みが顕著です。

 <そもそも「愛国心」条項にもあるように、教育内容に対する国家の干渉は、あらゆる教育活動に対して破壊的であるのと同様に、私立大学における教育活動に対しても破壊的であるから、到底容認できない>、この点については、あらゆる人が指摘していることと同じことを述べている。その上で私立大学プロパーの論点としては、第7条および第8条。これについては次のように述べている。

 最終報告には「7、大学」「8、私立学校」と、私たちに直接関係する項目があります。あたかも高等教育や私立学校を大切にし、尊重するかのような装いを凝らしています。しかし学校教育法に規定される大学の目的、私立学校の「公の性質」や「重要な役割」は、すでに現行法体系の中で明確に位置付けられており、わざわざ新たに項を設ける必要性はまったくありません。むしろその実現のための施策の充実こそいま切実に求められています。政府の怠慢を棚上げし責任放棄を糊塗する装いは必要ありません。

 そもそも、本気で高等教育、その中でも大きな役割を果たしている私立大学における高等教育を本気でなんとかしたいなら、現行法体系の中でやれることをやればいい。では、現行法体系の中でどこまで具体的になっているのか。

◆ 第7条 大学

 大学という組織の目的は、学校教育法第52条に次のように定められている*3

 大学は、学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させることを目的とする。

 わざわざ教基法を改正する必要などない。ちゃんと学校教育法にこのように定めてあるのだから、それを使えばいいだけの話。

◆ 第8条 私立学校

 私立学校の役割については、私立学校振興助成法第1条によって次のように定められている*4

 この法律は、学校教育における私立学校の果たす重要な役割にかんがみ、国及び地方公共団体が行う私立学校に対する助成の措置について規定することにより、私立学校の教育条件の維持及び向上並びに私立学校に在学する児童、生徒、学生又は幼児に係る修学上の経済的負担の軽減を図るとともに私立学校の経営の健全性を高め、もつて私立学校の健全な発達に資することを目的とする。

 本当に私立学校の振興をやる気があるのであれば、その根拠法は既にある。今まで私立学校振興をやってこなかったのは、法の不備のためではなく、ただ政策的にやらないと決めたからだ。つまり、今回教基法を改正してそこに私立学校への振興助成を盛り込んだとしても、政策としてやらないと決めたらやらない。同じことだ。根拠法は既にあるのだから、やるべきことはさらなる根拠法を増やすことではない。既にある根拠法の精神にのっとり、私学振興政策を実際にやることだ。

◆ 空手形はもういらない

 今まで散々空手形ばかりでやらなかったことを、今度は教基法に書くからといって何がどう変わるというのだろうか。今回の教基法に私立学校関連条文を盛り込んだのは、私立学校関係者に対する目くらまし以上のものではない。私立学校振興助成法が制定されたのは昭和50年、既に30年前である。30年前に決めたことにしたがって、やるかやらないかを決めるだけのことだ。教基法はまったく関係ない。

*1:簡単に言えば、全国の私立大学教職員組合の連合組織。

*2:こういうチマチマしたところの整理は、私大関係者がやるしかないと思うし。

*3:法庫」参照。

*4:法庫」参照。