障害者自立支援法案は本当に審議されたのか
法案の内容については改めて繰り返さない。あちこちで指摘されているように、その実態は障害者自立「阻害」法であり、この法案が施行されれば、すぐさま日本の障害者の生活は重大な危機にさらされる。質問に立ったある議員は、次のような言葉で締めくくっている。
公平にということですが、公平に障害者の人たちが生きられない法案になるだろうというふうに思います。
政府が「公平に」と言うときは、常に条件の悪い方へ揃えられることによって、今かろうじて生きていられる人たちの生活さえ危機に瀕する。内容についても重大な問題があるのは明らかであるとして、そのような重大な法案が一体どれほど真面目に議論されたのか。たとえば、委員会における次のようなやり取りを読んで、どう思うだろうか。これは果たして「審議された」のだろうか。
○△△委員
では、質問に入らせていただきます。まず、この資料を見てもらえますでしょうか。二ページ目ですね。「諸外国における障害福祉サービス」……
ちょっと定数が足りていないと思いますので、ちょっと確認して、速記をとめてください。これだけ重要な、障害者の命と生活がかかっている法案なんですから。とめてください。
○××委員長 それでは、△△委員からの指摘で、定足数が足りておりませんので、一時速記をとめてください。〔速記中止〕
○××委員長 速記を起こしてください。
△△君。○△△委員 こういう重要な、障害者の方々の命と生活を本当に左右する重要な法案を審議しているときに与党の理事が一人もいない、とんでもないことだと思います。
では、質問に戻ります。
・・・・・
○△△委員 結局、所得保障も今後の課題で、全然、今としては何にも確立されていないわけじゃないですか。そんなことで一方的に、所得保障の確立がお金がかかるから難しいと言っておきながら、なぜ、障害者の方々、六万円や八万円の障害者年金しかない方から二万円、三万円お金を取る方はすぐに先にやるんですか。
委員長、またこれ、定足足りていないんじゃないですか。確認してください。時計をまずとめてください。
○××委員長 今確認をします。(△△委員「まずとめてください」と呼ぶ)
速記をとめてください。〔速記中止〕
○××委員長 はい、速記を起こしてください。
△△君。
○△△委員 大体、これだけ本当に人の命がかかっている法案を審議しながら、定足割れすれすれ、あるいは先ほどのように、与党筆頭理事も、一人もいないなんということで、こんな法案審議するのは失礼ですよ、本当に。
次に、自立支援医療のことに行きます。・・・・・
(名前にあたるところは選挙期間中なので一応伏字に。検索すればすぐ分かりますけどね。)
質問に立つ議員たち(主に野党だが、この法案に当然反対・慎重審議を、という立場の人たち)は、個々の当事者の声をよく聞いて、実に誠実に質問されていると思う。それに対して、法案を提起する側の説明の、なんと無様で無責任なことか。厚生労働委員会の議事録の関連する議論を読むごとに、本当に悔しさを覚える。この法案の行方を心の底から不安を募らせている当事者たちの思いと、この法案を通過させようとする人々の発する言葉のあまりの緊張感のなさの、そのギャップに、幾度となく驚かされる。怒りを禁じえない。