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町村発言にみる誠実さ

町村外相が「米兵から性暴力を受けた女性が稲嶺恵一知事にあてた手紙について「米軍と自衛隊があるからこそ日本の平和と安全が保たれている側面が、すっぽり抜け落ちている。バランスが取れた考えとは思えない」と指摘」した件について。

性被害女性の手紙批判/町村外相「軍隊があるから日本は平和」
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200507141300_01.html

僕は(確信的な)非武装中立論者ではないから*1町村外相の言うことの理は分からないではない*2。しかし、そんなことはこの問題と何の関係もないのだ。町村発言は、この勇気ある手紙の主に対して徹底的に不誠実であり、ゆえに、僕は断固として町村発言を支持しない。支持されるべきでもないとも主張する。


記事の全文は次のようなものだ。

町村信孝外相は十三日の衆院外務委で、二十一年前に米兵から性暴力を受けた女性が稲嶺恵一知事にあてた手紙について「米軍と自衛隊があるからこそ日本の平和と安全が保たれている側面が、すっぽり抜け落ちている。バランスが取れた考えとは思えない」と指摘、女性の訴えを批判した。東門美津子氏(社民)の質問に答えた。

東門氏は「被害者の心の底からの苦しみに『軍隊が国を守っている。あなた、そこを知りなさいよ』という話し方はとても残念だ」と強い口調で反発した。

町村外相は答弁で、女性の手紙について「被害にあった方々の心情、気持ちは率直に受け止めなければいけない」と一定の理解を示した。しかし、手紙の中の「米兵達は(略)仕事として人殺しの術を学び、訓練している」との部分に関して、「軍隊の持つ一面かもしれないが、それだけをとらえて物事を決めるのはバランスが取れた考えとは思えない」と反論。

その上で「日本とアジアの平和が相対的に保たれているのは在日米軍の存在、自衛隊のさまざまな努力がある。軍隊をなくせば戦争がなくなるわけではない」と述べ、女性の訴えは一面的との認識を示した。

また、町村外相は「(軍隊には)戦争を抑止する機能が現実にあるということも認識を賜れば幸いだ」と持論を展開した。

手紙を出した女性は高校生だった二十一年前、米兵から性暴力を受けた。今月三日に起きた米兵による女児強制わいせつ事件を受け、稲嶺知事に基地撤去を求める手紙を書いた。

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200507141300_01.html

おそらく手紙の中で女性は、軍隊の存在自体を否定していたのだろうと推測する。町村は、それに対して正面から答えたのだろう。しかし、仮に(そこにあったかもしれない)軍備否定論に賛成しないとしても、女性がこのような暴力を受ける背景として地位協定の問題があることくらいは、了解していてしかるべきだろう。仮にも外務大臣である。日米安保条約に賛成・反対の立場を超えて問題視されている論点、日米地位協定の問題をよもや知らぬわけはあるまい。この不平等な協定が放置されていることによって、米兵たちは「アメリカ本土でならしない」蛮行に及んでいるのである。既に粗暴な一部の米兵達の間では、「沖縄勤務は、本土勤務にはないたのしみがある」ということが長年言われつづけてきているのである。

仮に軍備否定論には賛成しないとしても、それ以外に言うべきことがないわけではない。女性が被害にあってから21年がたっているのだ。1995年の少女暴行事件からでも既に10年たっている。その間の政府の怠慢については、指摘されない限りは知らぬフリを通す気か。日本政府のこれまでの施策に不備があり、必要以上に国民を危険な状況に放置しつづけてきたことに対する反省と謝罪があるべきである。まずは、この女性に対して、彼女を危険に晒したこと、そして実際に被害を受けてしまったことについて謝るべきなのである。


もちろん、質問者がヘタクソに過ぎるとは思う。しかし、質問者が下手だからといって、自覚しているべき問題を知らぬフリをし、ほっかむりをする態度が正当化されるわけではない。取調べが下手だからといって、言を左右にして自らの非を認めない犯罪者に道理があるわけではないのと同じだ。仮に野党が愚かだとしても、与党の不誠実極まりない態度は見るに耐えない。実に醜い。


次の記事も併せて読んで欲しい。町村発言を受けての、被害女性の応答である。

人権踏みにじるのは誰/被害女性涙の抗議
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200507151300_06.html

*1:一応、非武装中立論には見るべきものはあると思う。少なくとも、自称「現実主義者」と同程度以上に現実を見ているくらいには見ている。僕自身はまだ分からないことがあるから、ハッキリとした態度は示さない。示せない。しかし、そういうスタンスであるとしても、今回の町村発言は支持しないし、支持できないという論理を示すことには意味があると思う。

*2:分からないではない、というのは、ありえない理屈ではない、という程度の意味。ほんとにそうかは検討の余地があるし、イラク侵略を支持するなどわざわざ危機を増幅させながら軍備が必要だという主張は支離滅裂ではないかとは思う。