パレスチナを、村上春樹のエルサレム賞講演がきっかけで読み始める人に勧める5冊の本
「村上春樹をエルサレム賞講演がきっかけで読み始める人に勧める5冊の本」@鰤端末鉄野菜 Brittys Wake
↑に便乗して、返礼してみる。とはいえ、僕はパレスチナ関連の本を網羅的に読んでいるわけではないし、全然書誌情報が足りない。というわけで、知人の手助けなども借りてリストした上で、内容紹介については、パレスチナ情報センターの「書籍紹介 パレスチナ/イスラエルに関する注目の書籍」を参考に。勝手に「文学っぽいにおいがするなぁ」と思ったものをチョイス。*1
村上春樹ファンと村上春樹嫌いと村上春樹がどうでもいい人に捧げます。
イスラエル/パレスチナに関心を寄せるすべての人と、今はまだ関心を寄せていないすべての人にも捧げます。*2
1. エドワード・サイード『パレスチナへ帰る』
- 作者: エドワードサイード,Edward W. Said,四方田犬彦
- 出版社/メーカー: 作品社
- 発売日: 1999/09
- メディア: 単行本
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45年ぶりにパレスチナに帰郷したサイードが目撃するアラファト専制下の擬制の自治。侵略者イスラエルの蛮行と無能な指導者との二重支配に喘ぐ民衆の苦悩。サイードが90年代に発表した論文・エッセイ集。*3
サイードから1冊は欲しい、というのでパレスチナとは何か (岩波現代文庫―社会)とどっちにしようか迷った末にこっちに決定。
2. エリザベス・レアード『ぼくたちの砦』
- 作者: エリザベスレアード,Elizabeth Laird,石谷尚子
- 出版社/メーカー: 評論社
- 発売日: 2006/10
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イスラエル占領下の町ラマッラーで、誇りと希望を失わず、いつか自由をと願いながら暮らす少年たち。主人公の少年とともに12歳の目線に立って経験する占領の中の冒険物語。*4
村上春樹は「超現実的な」「嘘」がお好みらしいが、こちらは実際にあったことを組み合わせて作られた「嘘」とのこと。P-navi infoさんとこに、たいへんそそられる紹介文が。>●
3. エリック・アザン『占領ノート』一ユダヤ人が見たパレスチナの生活
- 作者: エリックアザン,Eric Hazan,益岡賢
- 出版社/メーカー: 現代企画室
- 発売日: 2008/11
- メディア: 単行本
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2006年5月、ハマスが選挙で勝利してまもないパレスチナを訪れたユダヤ人でもある著者が、淡々とした筆致で占領の現実を描くヨルダン川西岸訪問記。入植地、隔離壁、イスラエル人専用道路、封鎖などによってずたずたに切り刻まれる西岸の実態や、民主的な選挙を行ったことでイスラエルや国際社会から罰せられる結果となった選挙後の西岸の様子を人々との対話を通して描き出す。日本語版オリジナルのパレスチナの歴史を含む解説や再利用自由な地図も収録。*5
たとえば、本文中の次の一節。「ここを訪れて私は壁という用語が人を欺くものであることを理解した」。「入植者を守る手段ではない。目的は別のところにある」。昨年秋に刊行されたが、パレスチナ問題に関心を寄せる人の間では、ちょっとしたブーム。ネット上での紹介も、いくつも見つかる。>●1、●2、●3、●4
4. ガッサーン・カナファーニー『ハイファに戻って/太陽の男たち』
- 作者: ガッサーンカナファーニー,黒田寿郎,奴田原睦明
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2009/02/19
- メディア: 単行本
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20年ぶりに再会した親子の中にパレスチナ/イスラエルの苦悩を凝縮させた「ハイファに戻って」、密入国を試みる難民たちの末路に時代の運命を象徴させた「太陽の男たち」など、世界文学史上に不滅の光を放つ名作群、待望の復刊!
カナファーニーはパレスチナ人の小説家でありジャーナリストであり活動家。1972年に爆殺された。長く復刊の待たれていた名作ですが、ちょうど今月復刊されたばかり。なんというタイミング。刊行日は2月19日だそうですが、某筋の情報によると、既に店頭で見かけたとのこと。
5. ルティ・ジョスコヴィッツ『私のなかの「ユダヤ人」』
- 作者: ルティジョスコヴィッツ
- 出版社/メーカー: 現代企画室
- 発売日: 2007/08
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私は何者なのだろう。ナチスによる虐殺というユダヤ人の歴史的体験と私は、一体どのような関係で結ばれているのだろう。イスラエルと私は、どのような関係にあるのだろう。一人の人間として、そして一人の女として、自立を獲得する欲求と私のユダヤ帰属性は、どのように関わるのだろう。そして、そもそも「ユダヤ人」とは何なのだろう。「ユダヤ人」としてイスラエルで生まれ、その後日本で暮らすことになった著者が、アウシュヴィッツの底からパレスチナへと向かう内なる旅。*6
隠れた古典というか、この本も、この界隈ではすんごく有名な本。2年前に3度目の復刊を遂げた。ルティさんは日本で帰化申請を却下されて無国籍状態に陥った経験があることから、日本社会の文脈も含めて考えさせられます。最近、無国籍問題がクローズアップされることも多いですし、そっち方面に関心がおありの向きは是非に。詳しい紹介はこちら。>●
著者へのインタビューをしたときのエピソードが、記憶/物語 (思考のフロンティア)の中で触れられていたり。併せて読みたい。
以上5冊、およびドサクサ紛れの2冊。なかなか魅力的な作品群です。自分が一番読んでみたくなっていたり(笑)。
*1:追記:直接間接に書誌情報の収集に協力いただいた皆さま、ありがとうございました。
*2:id:y_arimさんのブコメのアドバイスにしたがい、追記しました。
*3:http://palestine-heiwa.org/books/19990901.htm。
*4:http://palestine-heiwa.org/books/20061001.htm。