モジモジ君のブログ。みたいな。

はてなダイアリーから引っ越してきました。

パレスチナ問題を理解するための基本前提

 最低限の(と僕が思う)ことを、三つ。

パレスチナイスラエルの占領下にある

 1967年の第3次中東戦争以来、パレスチナガザ地区およびヨルダン川西岸地区)はイスラエルの占領下にあります。その間、イスラエルによるパレスチナ側への不法入植*1が続いています。

 昨年、2008年においてさえ、ヨルダン川西岸地区への入植は続いており、むしろ、加速しているという見方もあります。次の記事は、昨年8月から9月にかけて書かれたものです。>「西岸入植地建設、飛躍的な加速!」「西岸地区のユダヤ人入植者の横暴」

 つまり、国境をはさんでそれぞれの国があり、時々、国境を越えて攻撃が行われる。といった状況ではありません。パレスチナは、1967年以来、一貫してイスラエル軍の支配下に置かれている、イスラエルパレスチナ側の土地を奪い、入植を続けている、ということです。ですから、当然、パレスチナ側からイスラエル側への攻撃と、イスラエル側からパレスチナ側への攻撃を、同等に扱うことはできません。被占領者が占領者に対して行う攻撃と、占領者が被占領者に対して行う攻撃が、同じであるはずはありません。

イスラエルはまともに停戦していない

イスラエルは停戦していたのに、パレスチナ(のハマス)が攻撃を開始したため、イスラエルが報復として攻撃を開始した」という理解は事実に反しています。

 そもそも、イスラエルは、空爆なども含めて、かなり自由にパレスチナ側に攻撃を行ってきました。ここ2週間のことではありません。たとえば、昨年5月にも、また11月にも、イスラエルパレスチナに攻撃を加えていることが紹介されています。>「ガザ地区の「ホロコースト」」(2008年5月)、「ガザ攻撃激化/食糧・燃料・電力不足深刻化/アミーラ・ハスの現場復帰」(2008年11月)

 また、同記事にも紹介されていますが、直接の軍事攻撃だけでなく、強力な経済封鎖が行われています。経済封鎖は、軍事攻撃に勝るとも劣らない被害を人々にもたらします。少し引用しましょう。

 また、このガザの閉域から出ることは重病人でさえままならず、医薬品の持ち込みも制限され、治療を受けられずに亡くなる人も次々と出ている。
 加えて、今年に入ってからは、食糧や燃料の搬入も厳しく制限されており、ガザ地区の日常生活は壊滅的な打撃を受けている。すぐにガソリンが欠乏し、一般車はおろかタクシーさえも走らなくなった。発電用の重油も不足し、電力もまかなえなくなった。電力不足は、病院の機器さえ停止させるにいたっている。さらに、毎日の主食であるパンを焼くためのガスもなくなり、パン屋が店じまいに追い込まれている。

 狭い空間に閉じ込められ、毎日、空爆と病気と飢餓に苦しめられ、バタバタと人が死んでいくという事態は、第二次大戦期にヨーロッパでユダヤ人がゲットーで経験したことと、どう違うというのだろうか?

 ミサイルで死ぬのか、移動制限や物資の不足で死ぬかの違いであり、そしてその違いは、殺される人においては大した違いではありません。いずれにせよ、イスラエルの政策の結果として、死んでいく、ということです。つまり、いかなる意味においても、イスラエルが停戦したことはありません。ハマスがロケット攻撃を中断したことはあっても、イスラエルが攻撃をやめたことなどないのです。

占領政策の放棄こそが現実路線

 以上のことからわかることは、「暴力の連鎖」「報復合戦」のような表現はきわめて不適切である、ということです。むしろ、イスラエルによる一方的な抑圧と支配の問題である、と考える方が実態に近いでしょう。また、「解決策が見えない」といった言い方も、極めて問題があります。問題が「占領」という一点にあることはハッキリしているのです。

 それは無理だとおっしゃるでしょうか?むしろ、イスラエルが今の占領政策を継続することの方にこそ、無理があります。パレスチナは、ずっとイスラエルによって踏まれっぱましですけども、踏まれても踏まれても、占領下で苛烈な支配を受けている限りは、決して抵抗がやむことはないでしょう。逆に、自分たちの業を深めるだけです。

 いずれにせよ、長期的に考えるならば、イスラエルに選択の余地はありません。決して抵抗がやむことはないのですから、ある段階で、ともに暮らすための枠組みを模索しなければなりません。つまり、占領政策の放棄だけが、現実的に可能な道である、ということです。

 もちろん、短期的には、イスラエルが占領政策を放棄することはきわめて困難でしょう。しかし、繰り返しますが、占領政策に先がないことは明白です。だとすれば、占領の終了は、遅かれ早かれそうなる、ということになるでしょう。イスラエルの将来のためにも、早期に政策を転換する必要があるし、真にイスラエルの友人でありたいならば、そのような政策転換が実現するよう促すことが、なにより必要なことなのです。>「本気でイスラエルがかわいそうだと思うなら」


※いくつか、本を紹介。

パレスチナ―非暴力で占領に立ち向かう (母と子で見る)

パレスチナ―非暴力で占領に立ち向かう (母と子で見る)

(基本)
ペンと剣 (ちくま学芸文庫)

ペンと剣 (ちくま学芸文庫)

  • 作者: エドワード・W.サイード,デーヴィッドバーサミアン,Edward W. Said,David Barsamian,中野真紀子
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2005/12
  • メディア: 文庫
  • 購入: 1人 クリック: 21回
  • この商品を含むブログ (30件) を見る
(サイードのインタビュー)
文化と抵抗 (ちくま学芸文庫)

文化と抵抗 (ちくま学芸文庫)

(サイードのインタビューその2)
占領ノート―一ユダヤ人が見たパレスチナの生活

占領ノート―一ユダヤ人が見たパレスチナの生活

イスラエル人によるレポート)
イラン・パペ、パレスチナを語る─「民族浄化」から「橋渡しのナラティヴ」へ

イラン・パペ、パレスチナを語る─「民族浄化」から「橋渡しのナラティヴ」へ

イスラエルの研究者イラン・パペの講演録)

*1:占領下に置いている他国の領土に自国民を入植させることが国際法に違反する、ということ。