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モジモジ君のブログ。みたいな。

はてなダイアリーから引っ越してきました。

金融市場の役割とデイトレの生産性

 野宿者、失業者の勤労意欲ばかりが取りざたされているけれども、金融に寄生して儲けているデイトレーダーみたいな連中の勤労意欲はなーんも言われない。それってヘンだ、と思う人は多かろう。よく、「市場でリスクをとることが貢献」みたいに言われるけれども、それは根拠のない思い込み。だけど、無反省に繰り返される。たとえば。>インタビュー:今後も金融ハイテクは必要=作家・石田衣良氏

 そんなところから考えられることを、ざっくりと書いておく。


 経済において、金融という機能はもちろん大事。でもそれは、たとえば、「ある企業の実体を見て、それを金銭的に評価する」というところにあるのであって、「ある企業の金融市場での評価を見て、それを金銭的に評価する」(トートロジー!)というところにはない。言い換えれば、投資家の役割とは、「実体経済を金融の文法に翻訳する」という点、情報生産というところにあるのであって、金融市場での値動きを見てるだけの投資家には、なんの価値もない。*1

 つまりは、デイ・トレーダーなど、実体経済における企業に何の関心ももたない投資家は、市場に何の貢献もしていない。逆に、こういう投資家が増えるほど、金融市場の値動きが実体経済とは無関係なものになっていってしまい、実体経済にこだわって参加している投資家は、下手すると損失を被ることになる。すると、プロであればあるほど、実体経済なんか無視して、市場の気分に注視するようになる。そうなると、金融市場の「実体経済を評価する」機能は損なわれる。

 同様に、実体経済との関連付けを困難にする金融商品も、金融市場のこうした機能を損なうことになるだろう。複数のリスク商品を混ぜ合わせてリスク分散を図ったりするなど、その他やたら複雑な金融商品も同じこと。やればやるだけ、実体経済の翻訳作業は手間のかかる面倒な作業となり、そんなことをやる市場参加者の割合はどんどん減っていく。金融市場での値動きとニュースが市場の気分に与えるインパクトだけに注視する方が割がいい、ってことになる。


 実体経済を評価する能力のない市場参加者の増加、その運用において実体経済評価を前提しない金融商品の開発、こうしたことは、金融市場の情報生産の役割を破壊しこそすれ、高めることはない。ただし、金融市場に流れ込む資金の量を増やすことだけは、可能にする。すると、株や土地などでバブルが発生し、その高騰で資産が増えたと考えた企業や個人が実物での消費・投資を増やす(資産効果)。そういう側面は、あるには、ある。

 でも、それって、フローの消費や投資に回る資金を吸収して、ストック市場に流し込んでるだけだから。フローの需要を増やしたいならば、ストック市場に流れ込んだ資金が株価や地価を上昇させてその資産効果でフローの消費や投資を増やすより、単純にフローの消費や投資に資金が流れ込む方がいいに決まってるんだから。だったら、フローの消費や投資を増やすためには、ストック市場の敷居をあげた方がいい、という議論も可能。*2

 バブルは、必ずはじける、ということも踏まえるならば、実体経済を金融市場に依存させる構造をわざわざ作り出すことの罪深さはさらに重い。


 つまりは、金融市場の規制緩和は、1)金融市場の情報生産機能を損なうように働く可能性がある、2)フローの需要を金融依存(バブル依存)の構造に組み込んでいく可能性がある、ということ。そして、現状は、そうなっていると思うよ。

 金融市場への寄生者の勤労意欲こそ、批判されるべきだろうな。(とまぁ、最初は勤労意欲の話から思いついたんだけど、書いてみるとあまり勤労意欲の話には触れていなかったりするので取ってつけておく。)

追記

id:goodfield 流動性の確保という面では貢献しているのでは? みんながみんな長期保有していたら必要なときに売れない。

 第一に、この場合の「流動性」をどう評価するか、という問題があります。それぞれの企業への評価を踏まえて株式市場に参入している人たちが一定数いて、高く評価する人が低く評価する人から買い取るような取引が行われているなら、それが不活発であるよりは活発である方がいいかもしれません*3。しかし、そのような情報生産に関与するつもりのない参加者が増えることでもたらされる流動性を同様に評価できるわけではありません。少なくとも、流動性を増やす効果と、市場価格の指標としての意味を形骸化させる効果を天秤にかける必要はあるはずです。

 第二に、「実体経済を評価する」ことを踏まえて参加する投資家であるかどうかの問題は、保有が長期であるかどうかとは別の話です。値動きとニュースの短期的なインパクトだけを見て参加する人の割合が減れば、平均的に長期保有の傾向が生じることにはなるだろう、と思いますが。また、結果として長期保有の割合が増えるならば、それに見合った流動性があれば十分だ、ということでもありますので、何の問題もありません(ということは、先ほどの天秤は、「デイトレは役にたってない」の方に傾くだろう、ということです)。

*1:まぁ、株価や地価の下支えをする、という意味はあるにはあるか。でも、後述するように、素直に消費や投資に支出していただいた方がいい。

*2:敷居をあげるだけでなく、http://d.hatena.ne.jp/mojimoji/20081102/p1 に書いたような、需要側の構造改革=再分配も必要。

*3:あくまで、「かもしれません」にとどめておきますが。