モジモジ君のブログ。みたいな。

はてなダイアリーから引っ越してきました。

枝野幸男って、そんなに酷いこと言ってるか?

※追記。ご関心がおありの向きは、コメント欄もどうぞ。
※追記の2。末尾で、id:himaginaryさんのブコメに応答しました。


 参考。>「朝生における枝野幸男議員の発言の詳細というか再現書き起こし - 地を這う難破船
 枝野氏の発言については、確信的なことは言えないけど(後述)、直感的に言って、筋はよくないとは思う。あくまで私見として。しかし、この発言に絡んでの枝野叩きはさすがに度を過ぎているように思うので、冷や水をぶっかけておきたいと思います。小沢なんか信用できないし、民主党も大嫌いなのに、何の因果で民主党の擁護なんかしてるんだ、自分。


 枝野氏の主張は、大雑把に言えば「銀行にはレントがあるだろう、だから、役員報酬や賞与なども高いのだろう、それを吐き出せ、預金金利として」というものです。で、その方法ですが、行政指導、つまり、言ってきかせる、ということです。かなり泥臭い話です。

 それを、Baatarism氏は次のように評しています。

与謝野氏の方法では利上げで普通に景気が悪くなるだけですが、枝野氏の方法だと預金金利だけを政府が強引に挙げた結果、銀行は預金を拒否し始めるでしょう。そうなると、銀行が資金を貸し出して借りた側がそれを預金するという信用創造のメカニズムが働かなくなり、マネーサプライは急減し、与謝野氏の手法とは比べものにならないくらいの大不況となってしまうと思います。
自民党利上げ派と民主党利上げ派の違い - Baatarismの溜息通信

 「再分配はポルポト」並みに牽強付会な話だと思います(実際、ジンバブエ・フラグを立てている気の早い人がチラホラ)。行政指導なのだから、預金を受け入れられなくなるようなことを銀行が従うはずもない。その場合、「信用供与機能を損なう」のではなく、せいぜい「政策として効果がない」というようなところでしょう。

 てゆーか、立法して強制するとして、それってどんな文言のどんな法律なんでしょうか?「貸出金利は○○%、預金金利は××%」とかって、法律で決めちゃうんでしょうか?そういうことを枝野氏が言っているのだ、と主張なさるというのであれば、それって、ためにする曲解だとしか思えませんけど。*1


 で、銀行にレントなんかあるんでしょうか?銀行業界というものが、ゼロ利潤条件が成り立つほどの理想的完全競争市場であるとでも言うんなら別ですけど、直感的にもそんなことはあるわけないのであって。だとすれば、そこになにがしかのレントはあるでしょう。まして、従来から言われているように、この業界には「ピンチになったら公的資金」という暗黙の了解に起因するモラル・ハザードがあるような市場ですし*2。だから、レントは、あると言えばあるでしょう。(だからどーした、とも思いますが。)

 ただ、それを吐き出すインセンティブなんかないわけです。だから、行政指導で、そして、そこに国民の視線を集めることで、いわばいたたまれない気持ちにさせて、それを吐き出させよう、と。市場的な圧力では吐き出さないので、政治的な圧力で吐き出させよう、というわけです。重ねていいますが、相当泥臭いです。ただ、ちゃんと合理的選択理論のフレームに乗っている話ではありますよね。その意味で、それほどとんでもない話というわけではないように思います。(重ねて言いますが、だからどーした、とも思いますが。)

 ただまぁ、「預金金利を引き上げろ」って、他に、なんか方法あるような気もしますし(たとえば、率直に課税とするとかできないものでしょうか?)、なぜに預金金利なのかよくわからないのですが、そういう意味で私見では筋が悪いように思います。これも重ねていいますが、よくわからないので確定的なことはいえませんけど。(あまりにも聞いたことがない話なので。場合によっては、先の「だからどーした」について、認識を改める必要があるかもしれません、くらいは言っておきます。とりあえず。)

 いずれにせよ、声を大にしていっておきたいことは、「与謝野氏の手法とは比べものにならないくらいの大不況となってしまう」はさすがに無茶だ、ということです。まだしも、貸出金利はあげちゃいけないことがわかっている分、枝野の方がマシではないじゃないんですかね。とさえ思いますが。

追記 id:himaginaryさんへ

預貸金利差で稼げなくなった銀行は、預貯金ビジネスから手を引き、より収益の高いビジネスに傾斜していくでしょう。…あれ?それって今金融危機で苦しんでいるどこかの国で既に起きたことのような…。
http://b.hatena.ne.jp/entry/http://d.hatena.ne.jp/mojimoji/20081002/p2

 えーとですね。「今金融危機で苦しんでいるどこかの国」みたいな国にしようとがんばってたのは、現与党の「名宰相」の秘蔵っ子大臣様ですよね。少なくともその論点について言えば、「自民も民主も同じくらいバカ」という話です。少なくとも、民主党叩きにはならないことは確認しておきたいと思います。

 あと、仮に、金融機関が「より収益の高いビジネス」に傾斜していくとしても、「有限責任で無限のリスクを取れる」という類の穴をちゃんとふさいでおくならば、「今金融危機で苦しんでいるどこかの国」みたいにはならない、少なくともそうなる可能性は下げられるはずです。だったら、金融機関が「より収益の高いビジネス」に傾斜していくのは、別に悪いことだとは限らないでしょう。*3

*1:行政指導ってのは、監督官庁が「このくらいにせー」って金融機関に言って聞かせて、「そんなん無理でっせー」とか「せめてこんくらいでー」とか「じゃかましいいうこときかんかい」とか、そんなんワイワイやって、ゴソゴソ落としどころを探っていくような話なわけで(ほんとに泥臭い)、そういう意味で、どこかに破綻が生じるようなとんでもない答えには落ちないはずです。その意味で、法律で決めて縛り付けるような話とは違うはずですよ。

*2:この一文、印象操作っぽいな。我ながら。まぁいいや。

*3:個人的に、あまり推奨する気もありませんが。