BIについて一言
総所得の1%の(というような、可能な限り低い割合を志向する)ベーシック・インカムと、総所得の10%、20%、30%、それ以上の(というような、可能な限り高い割合を志向する)ベーシック・インカムは、別物、正反対のモノ、と理解しておいた方がいい。
ダンコーガイの記事のようなスタンス、たとえば、「私は月額5万円、年間60万円程度がよいと思う」というような具体的な額・大きさについての発言は、BIの制度を正当化する議論とは何の関係もないし、争う余地のある論点。
むしろ、ダンコーガイのような論者でさえ、「貧乏人は死ね」と素で言うことをしないのならば、BIという枠組みそのものは拒否できない、否定できない、というものと理解すべき。その上で、富裕層の新自由主義者は、条件闘争を行ってきている、ということ。
反貧困の立場からの理論的な反撃としては、(1)BIの額・割合は「できるだけ小さく」ではなく、「できるだけ大きく」であるべき」という論点を説得力のあるものにすること、(2)BIの額・割合は「できるだけ小さく」の強力な論拠となっている私的所有権の論理をきちんと批判しておくこと、この二点が必要だ。
(1)はまだ十分になされているとは言えないので、とりあえず論点としてのみ提示しておく*1。強いて言えば、ロールズの格差原理の議論とか、かな。ただ、(2)については、既に立岩真也の一連の仕事があるから、とりあえずこれらを参照すればいい。
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というわけで、BIそのものは警戒しなくてもいいと思いますよ、ということ。>hokusyuさん
堂々と、できるだけ高いBIを要求すればいい。相手の側には「それは贅沢だ」以上の根拠はない。「贅沢で何が悪い」とでも言っておけばいい。とりあえず、立岩の諸論考を武器に。BIについては結論済みで、その条件闘争に戦場が移行するのであれば、これは前進と考えてよい。と僕は考える。*2
*1:可能だとの見通しは既にあって、目下作業中。一応、昔書いたものとして。>「批判的合理主義の正義論」(PDF) <BIなんて言葉は一度も出てこないけど、どうつながるのかは、分かる人には分かるでしょう。
*2:ちなみに、僕はBIだけでは済まない、と思っている。BI論を経由して、もう一手か二手、必要だと思ってる。たとえば、BIがあれば生活保護の対象者はぐっと少なくなるので制度運営コストを引き下げられる可能性があるし、教育・医療の無償化を「自己負担率軽減+BI」でやるなら、インセンティブと再分配を両立させてバランスの問題にすることができる。いずれにせよ、BIは重要。