そのまんま東ブームが見えなくしているもの
宮崎県のタレント知事のおかげで、県産品の売上が急増、地場経済が活気付いているとのこと。そりゃあまことに結構なことなんだろうけどね、しかし、マクロの消費が増えているのでないならば、宮崎県産品が売れただけ他の品物が売れなくなっただけのことであり、それは結局椅子とりゲームに過ぎない。宮崎県がやっていることは、宮崎県経済の生き残りの戦略として別に非難されるべきことではないだろうけれども、「地方にも活路はある」みたいな主張につなげるならば(つまり、そのまんま東みたいにやればいい、ということならば)、それは非難されるべきことであると思う。それはゴマカシだ。
そのまんま東はまじめに大学院で勉強したのかもしれないが*1、あの異常なほどのテレビでの露出は(つまり、テレビ業界の厚遇は)、いったい何なのか。他の都道府県の知事が同じように必死でやれば、同じように取り上げてくれるのか。そうではあるまい。
タレント候補が全部ダメなわけではない、その人次第だろう、と言われるかもしれない。それはもっともなことなので、一つ、タレント候補が満たすべき基準を述べておく。それは、自身がタレント候補であることが有利に働く現状を批判することだろう*2。そして、そんな奴は皆無だ。そういえば、そのまんま東は「東国原」の名を使い、芸名を封印した。僕はタレントとしての上げ底を使わずに知事業をやるのかとほんの少しだけ期待した。しかし、なんのことはない。「東国原知事」という、新たな芸風のタレントとして売り出しただけだ。
タレント候補は選挙に強い、という現状は、テレビ業界の既得権でもあるから、そういう状況を批判するということは、テレビの中ではありえないのかもしれない。新手の天下りと言ってもいいかもしれない。ただ、それを支える素地が、選ぶ側の中にある、ということだ。それが無反省なままである限り、こういう現象は続くだろう。そのまんま東にも彼を選んだ宮崎県民にも特に言うことはないけれど、そのまんま東現象そのものは批判されるべきではあろう。そのことだけでも確認しておきたい。