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モジモジ君のブログ。みたいな。

はてなダイアリーから引っ越してきました。

原発と活断層──柏崎・刈羽だけではない

【追記アリ】tkmisawaさんのトラックバックを受けて、末尾に追記。


 「柏崎・刈羽原発は活断層上に建設されている!東京電力は柏崎・刈羽から撤退せよ。」原子力資料情報室
 関連して、武本和幸さんの記者会見の様子。動画もあります*1。>「国は設置許可を取り消すべき・柏崎刈羽原発」
 原発やめますか?それとも?


 まとめると、次の3点。

  • 今回の地震で、原発直下に活断層があることがほぼ確実となりました。
  • 柏崎・刈羽原発の設置許可は、原発直下に活断層がないことが前提でした。
  • 国は設置許可の前提が崩れたのだから、設置許可を取り消すべきですね。

 運転再開の見通しなぞ検討する以前の問題なのだが、ニュースを見てると、電力会社にも国にも、それを批判的に見るべき立場にいるはずのマスコミにも、そんなつもりはないらしい。>「柏崎 刈羽 運転再開 見通し」でぐぐる

 改めて繰り返すけれども、「設置許可取り消し」は至極当然の主張。


 しかも、これって柏崎・刈羽に限らない。今回の地震原子力に対する不信感を高めたのは間違いないけれども、その中の具体的な一つをあえて強調するならば、原発の設置許可の前提となる地盤調査の信頼性が揺らいだ」ということ。

 今回の地震は、想定外の場所で起こったのではない。設置当時から危険性を指摘した人がいたにも関わらず、地盤調査はその危険性を指摘することができなかった(バカなのか悪意なのかはここでは問わない。どちらでも同じくらい信頼できないのだから)。柏崎・刈羽以外でも、その設置の前提となる地盤調査をしたのは同じ連中であり、それらは柏崎・刈羽に関する地盤調査と同じくらい信頼できる、あるいは同じくらい信頼できない。そのことをよく考えておかなければならない。


 ついでに、先の記者会見記事からの引用。

記者会見に同席した石橋克彦・神戸大学都市安全研究センター教授は「震源が10km離れていたことが、とても幸運だったのではないか。断層は原発直下におよんでおり、震源の場所によっては柏崎刈羽原発は約2倍の力を受けていてもおかしくはない」と指摘した。/また「中部電力浜岡原子力発電所は、東海地震で想定されている震源域の中央に位置しており、断層もある津波の心配もあり、大規模な“原発震災”に見舞われた場合、もっとも深刻に見積もって3000万人もの人が被災する」と語った。/さらに石橋教授は「日本の原発が立地している場所は、歴史的に地震の記録のある場所が多い。北陸の原発で“原発震災”がおきれば、京阪神や名古屋での被害が深刻だろう」と懸念を表明した。

tkmisawaさんからのトラックバック

をいただいた。丁寧な解説。>http://d.hatena.ne.jp/tkmisawa/20070724/1185266513
原発の真下の深いところを(斜めに?)活断層がよぎっているという場合、「原発活断層の真上にある」と言うのは、不正確」ということ?それなら理解できる。

 ただし、そこから「というわけで、今回の活断層の分布は全然直下ではないので、設置許可を取り消す根拠にはならない」となっているところにはクビを傾げざるを得ない。
 第一。東京電力原発の耐震構造を300ガルに合わせて設計しているが、今回の地震は600ガルを超えており、その意味で想定以上の地震が発生していることになる。だから、設置許可を取り消す根拠には十分なる。なぜなら、それは、今回の原発があった場所に、300ガルの耐震設計の原発を建設する許可なのであるから。
 第二。「「設計の見直しと補強工事で対応できます」と言われれば、もうなすすべもなくなる程度の根拠でしかない」というのは、まったくそのとおりなのだけど、にも関わらず、このtkmisawa氏の書き方は変。むしろ、「設置許可を返上しないならば、設計の見直しと補強工事で対応することを言わねばならなくなっている」のであって(そして、それを東電が口にできないのは、tkmisawa氏の記事末尾でも書かれているように、そんなことをやったらコスト高すぎてとても原発を支えきれなくなるのが目に見えてるから)。
 第三。

そもそも、この論理だと、ユーラシアプレートに向かって太平洋プレートやらフィリピンプレートやらが沈み込んでいっている日本列島全部が巨大な活断層の直上にあることになっちゃう。あなたのうちも皇居も首相官邸も、あのデータセンターも、そして日本列島にあるすべての原子力発電所も。

とおっしゃるわけだけど、こう述べることで一体何を述べようとしているのかはよく分からない&興味がある。この中で、原発以外に「その破壊が甚大な被害をもたらすような施設があるか」ということ。破壊されることだけが問題なら、そもそも「日本列島に住むな」ということになるはず。その意味では、皇居の「真下に活断層」(tkmisawaさんが言うような意味で)があったとしても、「一応止めたけど、どうしてもというならご勝手に」と言えば言えなくもない話。だから、「この論理」で、「原発だけが問題になる」のは当然のこと。

 だから、依然として、武本氏の発言は「活断層の真上」が学術的な定義とは異なる、ということ以外、特段問題がないとしか思えない。そもそも武本氏の「活断層の真上」が「土木学的または地質学的または地形学的な定義である」とする根拠はない。もちろん、確かにそのように誤解される余地があるのだから、そのような余地のない、あるいは少ない言葉遣いをした方がよい、くらいは思うけれども、しかし、学術的な定義以外で語ってはいけない、というのも専門家の傲慢である。少なくとも、「原発の破壊」と「その後の甚大な被害」が問題であるならば(それこそが問題である)、武本氏の発言の全体に特段問題にするべきところはない。

さらに、手前勝手に「活断層の直上」の定義を変えてその意味を過大に評価している今回の記者会見の内容は、いわゆるトンデモ系にありがちな論理展開となっている点も見逃すべきではないだろう。

の部分は、「手前勝手に「活断層の直上」の定義を学術的な定義のみに限定し、発言を過大評価と解釈しうる文脈をわざわざ選択した上で、発言の全体をトンデモと位置づけている」点を見逃すべきではないと思う。


・・・こういう話を書くと、またあちこちでバカにされるんだろうな、と思うので、自衛のために衒学的な話をしておく。
(1)「武本氏の発言の全体から、武本氏の「活断層の直上」は土木学的、地質学的、地形学的定義とは異なる」
(2)「「活断層の直上」の土木学的、地質学的、地形学的定義からすれば、武本氏の発言の全体はトンデモ」
この解釈のうち、(1)を取るべきか(2)を取るべきかは原理的に確定できない(クワインホーリズム)。だから、カルナップなどは「主張をなすに際しては慎重に、それらを検討する際には批判的に、しかし、言語形式を許可する際には寛容になろう」などと言っている*2デイヴィドソンもこれを受け継いでる。そうでないと、私たちが言語を通じて何かを理解する可能性はどんどん縮減していってしまうからだ。*3
 専門家であるほど、その分野に一家言あると自認する人ほど、知ってか知らずか、(2)の解釈を採用する傾向がある。これは、分野を問わない。しかも、その人の専門家としての責任感や善意に基づいてなされる*4。しかし、これこそが専門家が専門家であるがゆえの落とし穴であるように思う。・・・こういう専門家の既得権に触れるスタンスそのものが、実に不快がられるのも事実だけどね。

*1:この動画、分かりやすくてメチャおもろい。

*2:クワイン―言語・経験・実在、p.50から孫引き。

*3:だから、この「寛容の原理」に忠実な言論スタンスにおいては、複数の定義の元での複数の解釈の可能性を一つずつ取り上げ、一つ一つに対して批判を重ねた上で、「それ以外の解釈があるなら示してみよ」との限定つきで、「それ以外の解釈がないならば、あなたの主張はおかしいですね」という形式となる。批判は、再解釈に開かれていなければならない。

*4:もちろん、専門家権力の行使としてなされることもある。