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モジモジ君のブログ。みたいな。

はてなダイアリーから引っ越してきました。

赤ちゃんポストのその先=里親を考える

 『赤ちゃんポスト』政府首脳横やりの波紋@東京新聞
 あちこちで話題になっている*1

 先に僕の立場を言えば、赤ちゃんポストには断固賛成。というより、反対する意味が分からない。生まれることがすべての始まりなのだから、産むことはそれだけで完結した絶対善である*2。捨てた親を憎む子があるとしても、憎むことさえ生まれたことを前提にして初めて可能となることだ。その意味で、産んだ人間の頭の中を詮索する必要などまったくない。ただただ、生まれてきた人間をこの世界がどのように迎え入れているのか、その問題だけがある。・・・この「どのように迎え入れるのか」という点で、子どもたちの受け皿の問題──里親問題──に、是非多くの人に関心を持って欲しいと思う。


 「生まれた人間をどうするのだ」と言う人はいるだろう。当然考えるべきだ。しかし、事実問題として、他人の子でも育てようという人はたくさんいる。実際、日本以外の先進諸国では、里親制度はもっと普及しており、日本におけるよりもずっと身近なものであるらしい。別に各国の人間性や文化に違いがあるわけじゃない。その可能性を頭から否定するつもりはないが、これもまた事実問題として、日本は相対的に、他人の子を育てようとする人たちを支える制度が貧困であるのだそうだ。それもちょっと比較にならないくらい。隣国・韓国においても、ここ最近、里親制度の普及に力をいれ、実際進んでいるらしい(どこかで聞いた)。それでもなお文化の違いだと言いたいなら、より説得力のある根拠が必要だ。

 「それで育った子どもが幸せなのか」と問う人がいる。当たり前だが、里子として育った人にも、幸せな人も幸せでない人もいる。それは実親に育てられた子でも同じことだろう。「里子だったから不幸なのだ」と言う人がいるなら、それは産んだ人とは別の人に育てられたすべての人に対する侮辱として問題にしなければならないが、検討に値する内容はまったくない。元々、人間の一生が幸せか不幸かなんて、そう簡単に言えるものではない。そもそも、不幸になるなら産まない方が、死んだ方がいいなどというのは倣岸不遜な話であり、その不幸を生み出している原因について考え、そうではない人生が可能であるような世界、もっとマシな社会を作ろうと考えるのが筋だろう。だから、私たちが注意すべき事は、(1)人間の生を評価し序列化することを徹底的に拒否すること、(2)生まれてきた人間に十分な資源がもたらされる仕組みを作ること、この二つだと思う。一言でまとめるなら、「すべての子に親を、親のないすべての子に里親を」である。そしてこれも結局は「カネの問題」である*3


 そして、これはとても大事な点だが、児童養護施設の拡充では絶対にダメで、里親制度の推進でなければならない。その理由について、かつて次のように書いたことがある。

児童養護施設においては、大人という資源は圧倒的に希少である。そんな場所では、ある児童に対して全力を注ぐことが、別の児童の放置を必然的に意味してしまう。また、職員の継続的な勤務期間はさほど長くなく、数年でいなくなる。大人という資源の希少性と関わりの不連続性がもたらす問題の大きさは未知数であるが、無視できないほど大きいことは想像できる*2。必ずしも親である必要はないが、親以外の誰かがこの役割を果たすことは稀なのも確かだろう。
http://d.hatena.ne.jp/mojimoji/20060305/p1

実は、この指摘だけでは、児童養護施設の問題性は全然書ききれていない。職員によると児童間のものとを問わず虐待が頻発・常態化している現状がある。「まともな施設もあるかもしれない」などと言っている余裕は、少なくとも僕はないと思う。そのくらい酷い。まともな職員がどれほど努力しても、多数の児童を24時間365日完全監視することは不可能であり、学校でのいじめが発見困難であるのと同様に(あるいはそれ以上に)、児童間虐待は防止できない。「養護施設は子どもの地獄」と表現する人もいる。そして、職員の中にも不埒者が混ざっていて事前に完全にチェックすることができないとすれば、この問題は決して防ぐことはできない。これは職員のモラルに起因するというよりも、「施設」というものが持つ構造的な問題である。
 もちろん、一時滞在施設として必要な場面はどうしてもあり、廃止すべきだとは言わない。しかし、里親とつなぐことを前提にした「一時的なもの」として位置づけられるべきであるし、運用においても相当の改善が必要だ。

※ たとえば、何らかの事情で親と離れて暮らす子と措置されてきた虞犯少年・少女を、何の工夫もなくまぜこぜにしているというのは虐待を誘発しているも同然である。最低限分離すべきだし、虞犯少年・少女は虞犯にいたるだけの荒んだ状況があるはずなので、専門的なケアが必要である。現状では、そうした対応は驚くほど不足している。


 実は、里親問題はずっと前から気になっていてきちんと勉強したいと思っているのだが、なかなか時間が取れない。読みたいと思いつつ、読めないでいる本を幾つか紹介する。関心が高まってきているから、多分、他にも興味を持つ人がいると思うので。

「家族」をつくる―養育里親という生き方 (中公新書ラクレ)

「家族」をつくる―養育里親という生き方 (中公新書ラクレ)

里親とは何か-家族する時代の社会学

里親とは何か-家族する時代の社会学

*1:他に、「もう少子化対策が大事とか言うな@練習長」とか「「こうのとりのゆりかご」設置は難しい問題…なの?@good2ndの日記」とか「赤ちゃんポストをめぐって@wo/war〜精神医学の<クリプト>」とか「赤ちゃんポスト@百花繚乱」など。

*2:だからといって、中絶を禁止しろ、とか、そういう主張をする気はないので。

*3:ただ、「カネの問題」という言い方は、少々ミスリーディングだとも思っている。フレーズとして通りがいいから使っているけど。実際には「資源の問題」と述べる方が正確だとも思う。