モジモジ君のブログ。みたいな。

はてなダイアリーから引っ越してきました。

社会運動は誰の仕事か──ネット署名のトラブルをめぐって

【14:00追記、本文末尾】

 うちでも宣伝していた教基法改正反対関係のネット署名で連続してトラブルが生じていた。その件もまた、運動のあり方として考える材料をもたらすものではあろう。その中の一つとして、技術的に興味深い指摘として「http://sitebites.homeip.net/blog/193/*1があり、これはこれで勉強になる。先に申し上げておくと、この方(Maxさんという方らしいのだが)は「これ幸い」とばかりに運動家を叩いて喜ぶような下品な人ではない。その筆致や方々のコメントを見るにとても真摯な方であると想像する。また、このMaxさんのエントリそのものは、今回のネット署名推進者の方々に対しても示唆的な情報を多分に含むものであると思う。
 しかし、「政府に対して倫理を問うためのアクション自体が倫理的な欠如側面を持っていることを示している」とまで言明するに至っては納得できない・してはならないものを感じざるをえない。このことについて、当該エントリに次のような質問を書き込んだ。

はじめまして、noharraさん経由でこちらにたどり着きました。
技術的な話としては大変興味深いのですが、一点、どうしても疑問が残ります。つまり、そもそも社会運動は誰の仕事であるのか、という点です。

今回のサーバトラブルについて、僕は次のように考えます。前提は、社会運動はすべての人の仕事であり、僕がやっていない仕事を彼らがやっているのだ、ということ。彼らがヘマをするのはその仕事を実際にやったからであり、ヘマ以前にサボっている私たちは、そのことを踏まえた発言をしなければならないはずです。よって、ここで立てられるべき問いとは、こうしたトラブルを起こさないだけの技術力をもった技術者という資源が社会運動に投入されないのはなぜか、ということであるはずです。ゆえに、仮に今回のサーバ管理者に想定される限りで最大限の非があることを前提するとしても、積極的な悪意がない限りは、それはサーバ管理者に帰責されるべきことではない、と思います。

それに対して、こちらの記事に書かれたことを素直に受け取るためには、社会運動は今現に運動をやっている人の仕事である、との前提を置かなければならないはずです。つまり、僕や、こちらのブログ主さんの仕事ではない、との前提を置かねばならないはずです。その前提は妥当でしょうか?是非、お考えをお聞かせ願えれば、と思います。

 舌足らずのところもあるので、少し追記すると、今回のネット署名を企画した人たちが反省する必要がないとも思わないし、反省しないとも思わない。しかし、それを反省すべきこと、と位置づけるのは違う、ということだ。つまり、運動家は運動の推進をこそ願っているのであって、そのためのトラブルは、基本的にその人自身にとって望ましくない事態のはずで、それを反省しないわけがなく、きっと反省するはずである*2
 しかし、それは「反省すべき」ことだろうか。「べき」とは、彼らに内在する意味連関においてではなく、彼らと彼らの外部の他者との関係において位置づける言葉である。彼らは「署名した私たち」、「署名を呼びかけられた私たち」に向かって反省すべきなのだろうか。そういう意味であるならば、断じて違う、と僕は述べる。フリーライダーには、フリーライダーなりの仁義というものが*3、あってしかるべきではないのか、と思うのだ。noharraさんは「“自分の予測を超えた”規模の反応があったためにパンクをしてしまった。しかしここではあえて、わたしはMaxさんより無名のシステム管理者の肩を持ちたい」と述べる。僕もこれに全面的に賛同したい。

追記 社会運動の批判の仕方

 Maxさんの過去の記事、http://sitebites.homeip.net/blog/176を今読んだ。なるほど。本ブログ上でもメール一斉送信システムの紹介などして煽っていたので、責任を感じる。この指摘は素直に受け止めたい。
 それと、上記本文に足りない点を付け加えておく。Maxさんのように技術者の視点で問題を投げかけるよりも、運動家の無知やヘマを冷笑しながら通り過ぎる人々の方が圧倒的に多い、ということだ。そして、Maxさんへの、少なくとも批判を含んだエントリを僕は書いているわけだが、これもまた同時に、「黙っていればこそ踏むはずのなかった地雷」である。その意味で、僕はMaxさんの批判を、それ自体が運動の貴重な一部とも思っている。
 社会運動は、その目的に照らしてみた場合でも、批判されねばならない。そのヘマを批判されることは、批判される人にとって悪いことではないはずだ。しかし、その仕方は、次の準則を用いるなら、より生産的で、闘争的なものになると思われる。すなわち、「批判対象の外にいる、そもそもの傍観者達を浮き彫りにするような形で批判せよ」。

*1:via. http://d.hatena.ne.jp/noharra/20061213#p1

*2:しないとしても、まぁ、それはそれで、かまわない。というより、しかたない。

*3:あるいは、「署名をする」という手間をもって「フリーではない」と言う人がいるだろうか。であるならば、「チープライダー」とでも呼んでおこうか。