モジモジ君のブログ。みたいな。

はてなダイアリーから引っ越してきました。

小泉政治を勝手に総括

経済、外交、社会保障等、と分けて勝手に総括してみる。
整理してみて改めて思ったけど、これのどこをどうつついたら評価できるところがあるんだろうか?猿虎さんも言っているが、改革なんか全然やっていない。

経済

デフレ脱出なくして景気回復はないし、景気回復なくして構造改革も無理。見当違いの対策(=構造改革)をとっている限り、国民に痛みを求めている限り、絶対に景気は回復しない。

参考:
不況は神罰ではない
文科系人間から見た「小泉改革の本質」bewaad.com
(↑bewaad氏の記事はとても分かりやすい。お勧め。似たようなことを「結局さっさとリフレ策やれって話になるわけか」で書いたけど、bewaad氏の記事の方が断然分かりやすい。)


それにしても、それ以上に問題なのは、「痛みを求める」ことが反証不可能な政策だということである。景気回復すれば「十分痛みを我慢したから好転したのだ」、回復しなければ「まだまだ痛みが必要なのだ」、結果がどちらに転んでも、それは想定の範囲内であるから、政権は何の責任も取る必要はない。これほど経済が悪くて首相の責任が問われないというのは、それが最初からそういう性質の公約だからである。彼は国民に何も約束していない。だから、何に対しても責任を取る必要がない。「痛みを我慢せよ」というのは、「白紙委任状をよこせ」ということなのである。ところで、国民に白紙委任状を要求する指導者ってのを何ていうんだろうね?

繰り返すが、構造改革すれば景気が回復する、などという発想にまったく経済学的裏づけはない。竹中平蔵が経済学者であるなどと、冗談も大概にしてくれ、と思う。ただただ我慢を要求しつづけ4年、一体いつになれば終わるのか。断言するが、国民が痛いのはイヤだ、と言うまで終わらない。


その上で郵政民営化について。
代替案もたくさんあり、到底今回の政府案を無理やり押し通す理由はまったくない。郵政民営化しても、特殊法人への資金の流れはとまらないし、財政赤字もとまらない。ユニバーサルサービスや雇用不安などの懸案と民営化コストだけがもたらされる。
参考:
郵政民営化と解散を考える・その1:個別のご指摘を拝読して
郵政民営化と解散を考える・その2:民営化すべき理由の批判的検討
民主党案を通してみる郵政民営化関連法案の評価
郵政民営化と解散を考える・その3の1:郵政非民営化改革私案(概要)
郵政民営化と解散を考える・その3の2:郵政非民営化改革私案(考え方)、以上@bewaad.comより。

外交

対韓国、対中国の関係が悪化したのは、間違いなく小泉首相靖国参拝が引き金になっている。これについては、民主党岡田党首が(珍しく)よい質問をしている。

○岡田委員 総理、私は、総理の選択肢は三つしかないと思っているんですよ。先ほど来申し上げていることですが、一つは、みずからの判断で行かないと決めること。そして二番目は、相手を説得し、総理の考え方を相手を説得する中で貫いていくこと。しかし、総理はいずれもやらないんです、今。単に放置をして、その間、国の利益がどんどん失われていく。そうしたら、三番目の選択肢しかもうありませんよ、総理。それは、総理が日本国総理大臣をやめることですよ。もうそこまで大きな話なんだということ、日本の国の利益がかかっている話でもある、日本の将来がかかっている話でもある、そういう認識はありませんか。
第162回国会・衆議院・予算委・22号 小泉純一郎vs.岡田克也 より)

リンク先に岡田vs.小泉のやり取りを整理してあるので、是非読んでみて欲しい。小泉はもにょもにょごにょごにょ言ってはいるが、<中国との関係改善の具体策はありません>と言っているも同然なのである。これに対する小泉の最終的な答弁は次のようなものだ。

小泉内閣総理大臣 ・・・・・私は、一部の意見の対立があっても日中の友好は重視だということで、これからいろいろな分野において協力していこうということで、胡錦濤国家主席とも話し合いの中で共通の認識を持ったわけでありますので、経済の交流のみならず、文化、スポーツ、あらゆる分野において友好協力関係を深めていくような話し合いをこれからも進めていきたい。

この言葉そのものはうんうんなるほど、と一瞬思うかもしれない。しかし、これはむちゃくちゃである。なぜなら、中国があれほど重視している靖国問題について、<その靖国問題を話題にすることなく、他の話題で埋め合わせをして>解決しようというのであるから。このような態度は根源的な意味での対話の拒否であり、このような政策が続く限り、中国・韓国との関係が改善されることはありえない。「参拝したいなら、中国をちゃんと説得しろ」という岡田氏の指摘は実に本質をついている。*1それに対して、小泉は自分の政策を弁護するのに完全に失敗している。*2


さらに、このことは拉致問題の解決にも影を落とす。北朝鮮に圧力をかけるにあたって、中国・韓国・アメリカ・ロシアの協力は必要不可欠である。中でも北朝鮮との間に国境をはさんでいる中国と韓国の協力は絶対必要である。この両国との関係を悪化させて拉致問題が解決できるなどと考える奴は、どこのお花畑に住んでいるのかと聞きたい。仮に中国や韓国の言い分に一片の理もないとしても(僕はそのようには思わないが、仮にそうだとしても)、中国・韓国との良好な関係なくして拉致問題の解決はありえない。

靖国参拝を公然と肯定しながら拉致問題に関わるような輩は、まったくもって欺瞞的である。彼らには、拉致問題を解決しようという誠意か知性のどちらか、あるいはその両方が欠けていると言うほかはない。


さらに続ける。靖国参拝は他の東南アジア諸国との関係も悪化させている。東南アジア諸国に対しては、それらの国が輸出先として中国経済への依存を強めていることもあって元々日本一辺倒ではなくなっている上に、歴史認識はボディブローのようにきいてきている。

こう述べると、「東南アジア諸国にも靖国参拝は理解されている」と言う人もいるだろう。しかし、それはあまりに幼稚な発想である。とりあえず、アジアには3種類の人間がいる。靖国参拝を(1)積極的に肯定する人、(2)どうでもいい人、(3)積極的に否定する人。一言でいって、(1)に該当する人は東南アジアにはほとんどいない。当たり前だ。(2)はいる。そして、日本の軍国主義に痛い目に合わされたことを想起するがゆえに(3)の立場にいる人も当然にいる。この中で、靖国参拝に理解を示しうるのは、ほとんど(2)である。少なくとも、(3)の人たちは現実に存在するし、そういう人たちは日本の最近の右傾化に危機感を感じるだろう。ゆえに、トータルで見た場合、信頼が揺らぐことはあっても増すことはありえない。このことは、日本の国連安保理常任理事国入り立候補に際して、日本を積極的に推そうという国がほとんどないというぐらいには効いている。アジアの盟主としての期待は、既に中国に移っているのかもしれない。

では、対米従属は実を結んだのだろうか。6カ国協議でもアメリカは日本より中国の方を向いている。国連安保理常任理事国入りにも反対された。これ以上何を言う必要があるだろうか。惨めなほどの失敗である。

そして、対米従属のためにイラクに派遣した自衛隊は、中東地域の人々の信頼を著しく傷つけている。そりゃ、自衛隊が給水しているその地元のごく限られた人の中に、自衛隊の(存在ではなく)提供してくれる水に感謝している人はいるかもしれない。しかし、日本政府はアメリカのイラク攻撃を支持し、そしてその象徴として国家の軍事力を派遣してしまった。このことが持つ象徴的な意味は極めて大きい。我々は侵略者となってしまった。


総括しよう。拉致問題解決にも国連常任理事国入りにも失敗した。そして、アジアでもアメリカでも中東でも、これまで築き上げてきた信用を捨て去っただけの外交である。見るべきものは何一つない。

社会保障その他

そろそろ疲れた。けど、一応簡単に書いておこう。

年金にしても医療保険にしても、小泉政権がやったことは唯一つ。
保険料を上げて、給付を下げただけである。かつ、郵政民営化で無駄遣いをなくすのだ、などといきまいているが、年金の積立金からの無駄遣いは駄々漏れである。


道路公団民営化も、どちらかと言えば失敗だろう。
参考:道路公団民営化試案


それと、これに触れないわけにはいかない。先の国会で可決されるところだった「障害者自立支援法」(通称:障害者自立「阻害」法、ないし障害者「自殺」支援法)。内容の酷さについては、「第162回国会・衆議院・厚生労働委・25号 中西正司」を読んで欲しい。自立生活センター協議会代表による、その問題点の指摘だ。この法案が通ったら、大変なことになるが、自民党はこれを再審議するつもりは毛頭ない。てゆーか、もともと審議なんかやっちゃあいない


以上のことを考慮して、どこに投票するか決めようと思う。

*1:実は、小泉の選択肢はもう一つある。「中国との友好関係構築を諦めます」と言えばいい。お先真っ暗ではあるが、一貫はする。

*2:あるいは、弁護を放棄したと言うべきだろうか。