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小林よしのり『沖縄論』と歴史認識関連メモ

 この人の発言に同意できないことは多々あるが、そこまで嫌いでもない。少なくとも、筋論しかしない無能も国益論しかしない恥しらずも嫌いだ、という点では彼に同意するからだ。悪くない本だと思うし、何より正直な本だと思う。

 もちろん、これは小林よしのりである。彼流の歴史観や国家観を真面目に反省した形跡は見受けられない。しかし、そうした論点はについては、これまでもそうしてきたように、これからも批判し対決していけばいい。ついでに言わせてもらえば、左翼の方はその歴史観や国家観を真面目に反省してきたかといえばそうは思わないし、反省すべき点がないとも思わない。その意味で、そうした立場そのものよりも、立場を超えて普遍的に訴える材料がちゃんと描かれているかどうかという点から評価するべきである。そして、それに関して言えば、この本は間違いなくたくさんよいものを含んでいるとは思う。とりわけ、左翼知識人はどうしても目をそらしがちな点、沖縄社会に見られるさまざまな問題点であるとか、基地に対する複雑な関係であるとか。僕自身同意する点は多いだけでなく、初めて知らされた事実もいくつもあった。鵜呑みにしてよいわけではないが*1、それはどんな本についても言える話なわけで、僕的にはとりあえず買い。あと、瀬長亀次郎って名前を知っている人はほとんどいないと思うが、この人がどんなことをした人なのか、これはぜひとも多くの人に知って欲しい。


 ただし、小林的歴史認識についてはそろそろ解毒剤を期待したいところなわけだが、次のブログが紹介している本がとても参考になりそう。このエントリで合わせて紹介する意味は小さくないと思う。


 高文研 『日本・中国・韓国共同研究−未来をひらく歴史』@世に倦む日々
 http://critic.exblog.jp/2937029#2937029_1
 http://critic.exblog.jp/2943042#2943042_1
 http://critic.exblog.jp/2944513#2944513_1

歴史認識の問題においてはこれまで右翼の側の出版と販促攻勢が活発で、この領域で売れ筋になっていたのは、須く右翼「つくる会」系の著者かその亜流の銭儲け屋が書いた下劣な反中反韓プロパガンダの紙屑ばかりだった。正規で公正な歴史学の陣営からの近現代史のプロダクトで市場でセールスを上げるものが特になく、市場での競争状態が政治的な説得力の競争にダイレクトに影響を及ぼしていた。今回、このベストセラー商品を得たことは、正しい歴史認識の普及と挽回を願う者にとっては近年稀に見る慶事である。

 ここまで言わしめる本は絶対読んでみたいね。

*1:僕は沖縄に生まれてしばらくそこで育った、というだけのことで、沖縄の歴史や文化の権威ではないから、そうした事実関係であれこれ間違いがある可能性は否定しない。多分それなりに大丈夫なものだとは思うけど、さすがにそこまでは評価できません。あしからず。