モジモジ君のブログ。みたいな。

はてなダイアリーから引っ越してきました。

『経済学という教養』(第5章まで)

 僕の専門は応用ミクロ経済学としての公共経済学であって、経済学研究科の出身でありながら、マクロ経済学はせいぜい学部レベルの知識しかないど素人。一応は経済学徒の端くれなので、稲葉振一郎経済学という教養』は、素直に勉強させてもらうつもりで読んだ。社会倫理学者の解説で勉強するのはシャクなことはシャクだけど、自分が不勉強なのだからしょうがない。とりあえず5章まで読んだところでメモ。

 実際読んでみると、結構おもしろい。割と目のつけどころが似ていたので驚いた。僕はマクロ経済学はいろいろ読みつつもあまり納得できなかった。*1だけども、小野善康さんのだけは好きで、『不況の経済学―甦るケインズ』は一所懸命読んだ。貨幣そのものに対する需要という概念自体はある意味誰でも思いつくのだけど、それをモデルに導入するとこんなクリアな議論になるのか、とかなり衝撃的だった記憶がある。そんなこんなで『貨幣経済の動学理論―ケインズの復権』もまだ読んでないけど、持っている。

 以下、稲葉さんの本を読みながら考えたこと、思い出したこと。細かい話だし親切でもないので、続きを読むのはオススメしません。かなーり個人的メモです。

 貨幣的ケインジアンの立場から対症療法的ケインズ政策が帰結すると考えられるみたいなんだけど、僕は(広い意味での)構造改革路線も帰結するんじゃないか、と考えてる。

 不況の原因の考え方としては、大きく分けて「市場の不完全性」と「有効需要の不足」がある。原因を「市場の不完全性」と考えるならば、その解決方法はその不完全性を取り除く、ないし緩和することだ。これは構造改革路線ということができる。これに対して、貨幣的ケインジアンは「有効需要の不足」を主な原因と考える。人々が具体的な財・サービスよりもお金そのものを欲するために、お金を使わない。つまり、守銭奴的選好を持っているために、お金が有効需要に結びつかない。それが不況の原因と考える。だから、不況の対策としては、政府支出を増やすという伝統的なケインズ政策に頼るか、人々の財布の紐が緩むような何らかの変化がいる。

 人々の財布の紐を緩める変化のその1は、魅力的な新製品の登場。小野さんはこれを重視していて、製品開発などを促進するような政策を行うことを提唱している。もちろん、短期的な特効薬ではないことは重々承知の上で(のはず)。その2は、人々の不安を取り除くこと。人々の将来不安があれば、なくても死にはしない程度の財やサービスは購入されず、人々はリスクに備えて貯蓄する。これが人々の財布の紐を固くする。これには手のうちようがない。そんな感じの話だと思う。

 僕は、ここで社会保障の信頼というのがとても大事だと思ってる。*2つまりは、社会保障構造改革。人々の財布の紐を緩める変化のその2を実現するために。これは金子勝さんがしきりにいっている「セーフティネットの張りなおし」なわけで、稲葉氏は金子勝をコテンパンにやっつけちゃってるけど(で、それもあたってると思うけど)、僕は金子氏の社会保障構造改革の主張は結果的には当たってるんじゃないか、という気がしてる。

 まだ5章までしか読んでないけど、思ったよりもずっと面白くて、久しぶりに経済学の本を読みながら*3ワクワクしてる。小野さんの本以来、かな。6章以降公共性絡みの話が出てくるのと、マルクス経済学の不勉強を手間を省いて補ってくれそうな7章とか、なかなかたのしみ。明日はこの本を読むつもり。

 ・・・というわけで寝なければならないので寝ます。

*1:読めていない可能性も大ですが。

*2:かなり我田引水というか、牽強付会というか、かなり検討をしなければならない話ではあるのだけど、とりあえず妄想をメモしておく。

*3:非経済学者の手になるものなんだけども