モジモジ君のブログ。みたいな。

はてなダイアリーから引っ越してきました。

『セックス・ワーカー』

 ここの日記に僕が書いていることからすれば、基本的には僕が買売春に否定的なスタンスの持ち主なのは一目瞭然。なんだけれども、セックスワーカー当事者の話を読んだりしていると、いつも揺れる。

 ひとまず小野一光『セックス・ワーカー―女たちの「東京二重生活」 (講談社文庫)』を読みつつ。以下、メモ。

SCENE1 留学する女・千秋

  • ピンサロの店長が面接にきた少女を捕らえて離さないその手口に慄然とする。
  • 「風俗の仕事がそんなに嫌いじゃないんだ、というセリフには、さほど違和感はない。
  • ピンサロは嫌だったが今のイメクラの仕事は楽だし好きだという。結局は労働条件の問題なのか?
  • 彼女が風俗に入るきっかけになっただらしない彼氏には呆れるが、そういう人間とも付き合って失敗してみたりもしながらも、彼女は自分の力で生きて成長している。
  • それでも友達には仕事のことは言えないらしい。軽蔑されるのが怖い。
  • 経済的に逼迫して入った風俗の仕事ならそれは仕方がないかもしれない。しかしそうしなければならないという差し迫った理由もなく、好きでやっている仕事である、と言われたときにはそれを軽蔑するのは、嫌悪するのは(どういっても同じだろうけど)やはり差別なんだろうか?
  • いや、僕としては嫌悪する気にはなれないんだけれども、嫌悪する人たちに何って言えばいいんだろうね?
  • かなり素で頭がいい子なのは間違いない。それにしても、この子は実に人に対して臆病なところがある。
  • 「かなり性欲が強いんだ」と言う。だからこの仕事が好きだ、と言う。いいにくいことだと思うが、そういうこと(彼女にとってはこれが本当の理由)を隠しているのが嫌だ、という。

SCENE2 泣く女・チカ

  • 過干渉な父親への強い反発。
  • ストーカー事件をきっかけに、風俗で働いていることは父親の知るところとなる。しかし父親は怒らず、ただ「なんでこうなっちゃったんだろう」とポロポロ泣いていたらしいことを聞き、父親の愛情を理解?する。
  • 今は父親を好きになった。父親を毛嫌いしていたころの自分が嫌いだ、と言う。
  • それでも風俗の仕事をやめないのは「私の誇れる仕事はこれしかないから」

SCENE3 見られたい女・さゆり

  • OL時代に合コンしまくって結婚。退職。二ヵ月後、暇でしょうがなくて風俗の道に入る。
  • 「風俗をやっている女の子のなかには、この、自分が誰かに求められる、認められるということに喜びを感じ、やめられないという子がかなりいるのだ。」
  • 夫にばれて泣かれる。いったんやめるがノイローゼになり仕事に復帰。ケロっと直る。
  • 風俗店のアイドルであることが自分の支えであると言い切る。逆に切ない。

SCENE4 籠絡する女・マリ

  • 「すべてが安定していないのである。彼女は、心も体も行動も、バラバラだ。

高い知力があるにもかかわらず、一時の感情で行動に走ってしまい、後悔する。が、いくらいやになっても、その場にずるずると居残ってしまったり、またもや思いつきで行動してしまう。まったく脈絡がなく、それでいて短絡的な、判断。まるで捨て鉢になっているのかと思うほど、自分を愛していない。」

  • インタヴュー開始時から彼女に対して感じていた違和感を、著者はこう解釈する。これは解釈の暴力か?暴力だとして、他にどういう言い方がある?
  • 案の定、彼女は自分のことが大嫌いだと言う。
  • 「ただ、やっぱり今もセックスって、私のことをそれほどいいと思ってない人とするのが一番好きかもしれない。なんか変に期待されて、終わった後で、大したことないじゃんってふうに、私が騙してたって思われると嫌だから。」
  • 最後に少し示唆みたいな一文があるけども、それでも「籠絡されていたのかもしれない」の意味が分からない。

SCENE5 抱きしめられたい女・カオル

  • 厳しい父親の勧めで銀行に勤める。もっと堅くないところにつとめたかった。
  • 成績下がったらお母さんかわいそうだから、勉強は真面目にやった。
  • 「じゃあ風俗の仕事はかわいそうではないのか」と考える著者。
  • もちろん、著者が風俗の仕事をいやしいものと決め付けているのではなく、「基準が母親を悲しませるか否か」ならどうなのだ、一貫しないように思える、という違和感の表明。
  • 著者の結論。「ばれなければかまわない」というメンタリティ。
  • 「実際にやってみてこっちの(仕事)が落ち着く」という。いろんな話が聞ける、といったことのほかに、「抱きしめられると落ち着く」という。
  • このパターンはかなり多い。と著者は言う。厳しい父親によっては満たされなかった「抱きしめられたい(=愛されたい)」という気持ちの代用。と洞察、ないし、決め付けている。

SCENE6 吐いてしまう女・キョウコ

  • 有名国公立大学の医学部生。SMクラブ勤務。
  • セックスについては、最初・二番目に付き合った男の身勝手なやり方で男性不信気味に。身勝手な、というのは、たとえば行為の終わったすぐ後にテレビをつけたり、タバコをくわえたり、といった行動。一つ一つは実に些細なことにも見えるが、これが決して些細なことではないのはよく理解できる。
  • かつて摂食障害だったと語る。他人からは自信家にみられるが実際はそうでもない。そのせいだ、と自己分析する。
  • 兄の話。
  • M女をやっているときには、自分のすべてを解放している、と言う。「水道の蛇口を最大にひねって、開けっ放しにしてる感じ」

SCENE7 踏んでしまった女・ミホ

  • 高校時代に援助交際。すごく不快だけど、かなりライトな意味での不快。「仕事がきつい」とかとほぼ同じ意味。短時間で高収入だからやってた。
  • 「この経験でセックスに対して醒めちゃったってのはあると思う。男は単にやりたいだけなんだ、相手は誰だっていいんだって思っちゃったから。」
  • 風俗と援交は違うという。
  • バレたら彼氏は悲しむだろうと言いつつ、「バレないから大丈夫」。ここでも、か。
  • そもそも、こういうことがバレても単なる仕事の一つとして受け止められるような社会になった方がいいってことか?よくわからんが。
  • 風俗は最初はすごく嫌で、適当にやってて、リピーターとかもいなかった。一度すごく明るくサービスしたらとても喜ばれた。お互いが気分よく終わるために、今は割り切ってやっている。
  • ポジティブだとの指摘に「自己防衛本能だ」という。いけないことしてる、って悩みはじめたら、どんどん鬱状態になるという。そこまでして働かないでもいい、という言葉には、「(けど)働く時間に比べて、もらえる給料が大きいから」
  • 何のためのお金なのか、僕にも分からない。ただ、嫌かもしれないができることがあり、それで得られるお金がこういうものだとしたら、その1割程度しかもらえない普通の仕事はバカバカしくなるだろう。それは、男女の経済格差がなくなったとしても、そうだろう。彼女たちの給与に比べれば、今の男子の平均的な給与もバカバカしいくらい安い。

SCENE8 自立したい女・ユウコ